代表理事 平成29年11月のごあいさつ

国史連続講座 2017年11月11日収録分代表挨拶

今、トランプ大統領がアジアを歴訪しているところで、ある意味非常に緊張感が出てきたのは、北朝鮮がどう動くかということです。北朝鮮が戦争をするかどうか、アメリカが北朝鮮を叩くかどうかという問題が今非常に重要になってきています。
 日本の思想というのはだいたい外からの刺激というか、思考です。安倍政権が衆議院で完全に3分の2を獲ったというのも、人々がいわゆる外からの攻撃があるということを察知したからに他なりません。今それに対処できるの安倍首相しかいない、そういう判断が明らかに働いているということだと思います。それによって全体的に日本の思想、これからの我々の学問も含めて新しい方向に行くだろうと考えています。

 今回ちょっと見ていますと、日本にトランプ大統領の娘が来た時に帝国ホテルに泊まった。そしてイヴァンカさんがどこに行ったかというと、皇居に行っています。皇居の前で散歩するという一種のパフォーマンスをやったわけですけれども、これは非常に重要なことで、あの方はクシュナーというユダヤ人の奥さんでユダヤ教徒です。彼女が散歩するとたくさんの護衛がつきますから大変なことなのですが、皇居前を歩いて二重橋の前で写真を撮ったということをインターネットで流しています。単なる憂さ晴らしみたいな散歩であろうと皆が思っていますけれども、あれは明らかに「日本を評価する」「日本の皇室を評価する」ということです。それから「日本の文化伝統を非常に評価する」ということです。そしてイヴァンカさんは、朝鮮半島に行かなかった。韓国に行かずに、日本だけで帰った。これも非常に効果的で、彼らの考え方をよく示しています。クシュナーもいたということで、これは韓国や中国に対してと非常に違った、日本に対する意思表示だというふうに私は見ています。この中には、日本とユダヤの和解ということがあります。この和解、連携というものが北朝鮮問題も絡んでいるわけで、このことのディーテイルは長く話さなければならないのですが、トランプがどう動くかということはクシュナーにかかっている。そしてロス商務長官、それからマヌーチン財務長官、これも全部ユダヤ人です。こういう人たちがどう動くかということを見れば、だいたいトランプ大統領の動き方も分かります。我々はそれを察知しなければいけないし、またそれが非常に日本にとって有効に働くだろうと私は考えています。

 しかし、これは公にする必要もないし、ここで話すことは学者としての話です。戦後における学問のグランドセオリーがマルクスで、ユダヤ人の思想ですから、あらゆる個人主義思想・近代思想、つまりディアスポラ的思想が近代を作っていると言えます。ですから、国家というものに対する認識が欠如している。おそらく戦後の思想はみんなそうなっていますから、個人主義がどうしても突出してしまう。そしてそれは破壊をする。私は最近『日本人にリベラリズムは必要ない。』(ベストセラーズ)という本を出したのですけれども、リベラルは完全にユダヤの思想である。それを分からないで、日本人は一生懸命真似をしているところに問題がある。日本の歴史を専門とする人気の東大教授が、「歴史史料に対することはいつも批判だ」と言っている。これは羽仁五郎という戦前の東大の先生がそう言っているから自分もそうだということで、これも明らかにフランクルト学派の「批判理論」です。いつの間にか日本の知識人が、ある意味で当たり前のようにそれを身につけてしまった。常に「批判」という言葉を使えば、もう既にそこに思想があるかのような、あるいは学者の態度あるかのように居直ってしまった。ところが、これはユダヤ人の思想の一環にすぎない。常に批判をして自分たちの存在を、つまり少数派の存在を明らかにしていく。そして批判をすることによって体制を崩す、あるいは国家というものを否定する。そういうところに規範があったということを東大の先生が言っている以上は、完全にフランクフルト学派の思想に引っかかってしまったということです。隠れた左翼思想がずっとリベラルに入っていることを、分からないといけないわけです。

 それに対して我々がすべき思想的準備は、やはり文化と伝統というところをしっかりと身につけるということです。日本の思想の基本というのは自然道ですから、そういうところを我々がいかに言論化してゆくかという議論によって、日本の思想をもっと前に出していく。そしてそれが、ある意味で普遍的な思想にもなりうるわけです。もちろんキリスト教をはじめとする一神教に対しても、そこで初めて議論がなされればいいわけです。 いずれにしても、今回のトランプの訪問が戦争という危機を招く。招くというよりも、そういう問題がこれまでの日本の「右翼か左翼か」というような対立軸をすべて崩壊させてしまうような時代がやって来る。そこが非常に興味深い。「つくる会」の運動も、もともとそういうところを見据えてやってきたわけです。これは「アメリカファースト」という前に我々は「日本ファースト」と言っていたわけで、別に狭隘なナショナリズムではなくて、健全なナショナリズムです。かつての「つくる会」は、そういう意味では非常に先駆的であったと思っています。

平成29年11月11日:当会代表理事/東北大学名誉教授 田中英道