代表理事 平成29年3月のごあいさつ

 この度、朴槿恵大統領が辞任に追い込まれました。日本の近隣諸国の動揺というのが非常に激しくなっていて、我々は歴史の長い体験から両国を見るということで、日本から見る両国というのは、今までは中国や朝鮮から文化がやってきたとか、そこから我々は学んだみたいなことでずっと言われてきました。その「学んだ」「教えた」と称する両国がこんな体たらくになり始めたということで、そういう実情ではなかったということの証明のようになってもいるわけです。本来の日本の在り方、日本の本当の実力というものがやはり今厳然として出てきているということがはっきり言えると思います。我々は歴史を掘り起こしてその証明していくということをずっと続けているわけです、それがある意味で実を結びつつあります。

 歴史認識の問題としての「慰安婦問題」は、みなさんもご承知かと思います。今いちばん問題になっているのは少女像、慰安婦像がやたらに建てられているということがあります。これに対して学会や研究者たちが語らず、ジャーナリストたちはみな語ってはいますけれども、あの慰安婦像というのは一体何者か、何なのかということをちょっとでも考えると、おかしいことに気づくのです。実を言うと、あの少女像を作ったのはキム・ウンソンとキム・ソギョンという夫婦なんですけれども、彼らがなぜあのような少女像作ったかというと、この二人は韓国での反米活動をやっている人なのです。平成14年(2002)にアメリカ軍の装甲車が女子中学生を轢き殺したということで、それで作ったのがあの像なのです。米韓同盟を廃棄しようという運動をやっている人たちなんです。米兵をいじめ続け、追い出そうというスローガンを掲げて米軍基地にデモをしています。キム・ウンソンというのは平成19年に親北朝鮮団体の民族美術家協会の事務長として北朝鮮にも訪問している人です。そして、反米団体「平和と統一を導くサラムドゥル」の記念碑建設の委員にもなっている人です。ここから分かるように、あの少女像は日本軍の慰安婦とは全く関係ないものなのです。

 ちょっとでも学問的に調べてみれば、あんな少女像が慰安婦像、特に日本人に関わる慰安婦像なんて言って世界中に設置されるというのは、元々とおかしいんです。あれは朝鮮人の女子中学生、アメリカの装甲車に引かれた女性に過ぎないんです。ですから、ジャーナリズムもみな今まであれが絶対的な慰安婦像みたいなことを認めてきたということが元来おかしいわけです。あれは慰安婦ではありませんよ、ということをはっきり言えばいいんです。そういうことをきちっと考える、あるいはどういう人がどういう意図で造ったのかということをちょっと調べれば、あんな像はデタラメだってことが分かるんです。それがいつの間にかたくさん作られて、みんなもあれは慰安婦像だと信じ込んで、なんか恥ずかしい思いをしているということ自体が元々おかしいということをはっきり言わなければいけないと思います。

 私はもともとそういう彫刻のことも研究しているわけですけれども、慰安婦像であんな若い子を作るというのも芸術的なセンスがないということです。いかにもイノセントなのです。何も知らない単なる少女が騙されてゆくような、そういう姿自体もおかしいわけで、あのチマチョゴリを着て、朝鮮人慰安婦を模したとされます。でも、だいたい椅子に座って、向かって左側――座っている立場から言うと右側が空席なんです。その空いてる席は「正義をいまだに表現していない、高齢で死を迎えている生存者を象徴している」なんて勝手に言ってますけれども結局、慰安婦に応募した女性が椅子で待っているという、そういうイメージしか考えられないです。

 一方の空いている席の人は、慰安婦に本当は行きたくないんだというので諦めていた――私の研究では慰安婦の記述はOSS(戦時情報局)が最初なのです。これは戦中に出ていまして、昭和19年(1944)くらいです。そういう文書に出てくるのが、最初の「慰安婦問題」なのです。どういうことかと言うと、最初は看護婦としての募集に応募した女性が、釜山あたりかと思っていたら、広島に連れてこられ、そこからビルマなどの戦線に送られるという物語の女性が言っていることとして出てくるんです。

 ですから看護婦として雇われて行ったんですけども、これはどう見ても最初からその女性は戦線に送られる予定であるわけで。そして看護婦として行かざるをえなかった女性の物語がOSS文書の、つまり諜報機関が出している広報に載ったんです。ラジオ放送された体験談として記録が残っているんですけれども、その人は看護婦として募集されて日本に連れていかれ、そして戦線に行くという経緯で、そして連れてゆかれたところで兵士の相手をさせられるという嘆きを綴ったものなんです。けれども、とにかくあの時代は朝鮮でも仕事がなくて、女性もやはり生活しなくちゃいけないということで応募せざるをえなかったということがよく分かるわけです。

 私は美術家ですから、そういう形を見るとどんな意味か考えるわけですけれども、大体慰安婦像を作るなんていうのは日本人だったら屈辱的ですね。自分たちがそういう目に遭っても、忘れようとするのが普通じゃないですか。たとえ他の国からやられたことであっても、それは自分たちが弱かった、あるいは愚かだったということの反省がどこかにあるわけです。ですから、日本人だったらあんなものは到底造らないし、それどころか他国の人だってああいうことは絶対にしません。強制されたみたいなことを言ったとしても、やはりその像をわざわざ造るということはありえないことです。

 実を言うと、あれは一つの宗教像になっていて、一生懸命着物を着せたりして、日本人でいえばお地蔵さまになってしまったという説もあります。殉教者のように、宗教的な信仰の対象になったなどと奇妙なことを言う人もいます。それを考えると、我々が物事をいかにイデオロギーで見ているということがよく分かるでしょう。実際の経緯を見てみると慰安婦像ではないということ、そして「あれは慰安婦だ」と決めつけて、反日運動のイデオロギーのシンボルとして見ているということ自体がやはりおかしいんです。

 いずれにしても朴槿恵(パク・クネ)大統領が像を撤去することを約束したはずなのに、本人がこうやって辞任してしまうということで、次の文在寅(ムン・ジェイン)という方がどう出るか知れませんけれども、もともとあの像は慰安婦ではありませんよということをはっきり言えば、向こうだってもっとたじろぐだろうと思います。

平成29年年3月11日収録  当会代表理事/東北大学名誉教授 田中英道