代表理事 平成30年5月のごあいさつ

2018年5月12日収録分代表挨拶

 リトアニアとサルベニア、それからローマへの出張から帰ってきました。向こうで何をやってきたかと申しますと、私の専門の学会もあったのですが、それとは別に講演を頼まれました。今ものすごく日本に対する関心が強いのです、それは宗教問題です。世界での問題は、イスラエルとイランがいちばんホットな問題です。今日も新聞で書かれていましたけれども、イランとの核合意をアメリカが蹴った。蹴ったとういうか、離脱するという事になった。そして、今ネタニヤフ首相がイランの核開発について、ものすごくたくさんの証拠があるといって提出したわけです。このことで核の問題というのが非常に重要で、そして同時にそれが北朝鮮と関係があるということが出てくると、これはイスラエルとアメリカが組んで北朝鮮をやっつけるという事は十分に考えられます。実を言うと、少し話したのは、要するにヴィリニュス(リトアニアの首都)というところは面白いことに、もともとアシュケナージというユダヤのいるところで、あの辺から多くのユダヤ人がイスラエルに行っています。バルト三国の一国ですから小さな国なのですけれども、世界情勢を聞きたがっています。それから宗教問題も今、非常に重要だということを認識している。実を言うと、ジャーナリストからインタビューを1時間ほど受けたのですが、要するに日本はどうだということです。戦争があると常に、キリスト教とイスラム教の戦いが表立ってあるわけです。イスラム関係の国と、西洋諸国といわれるキリスト教国です。そういう思考パターンというのがしっかりと有って、イスラムはイスラムでしっかりと伝統があります。歴史的にみても、私たちから見ればキリスト教文化というのは14~5世紀からルネッサンスとか、後の近代があって文化が高くなったわけですが、それはすべてイスラムから学んだことです。イスラムというのは7世紀から12世紀くらいまで非常に高度な文化をもっていました。文明をもっています。それからビザンチンなどいろいろ経由して、そこから西洋文化が学んだのです。それだけ借りがあるにも関わらず、今イスラムを決定的に叩こうとしている。「程度の低い文化」「つまらない文化」だというふうに考えて、そういう格好をさせています。世界中にそれが宣伝されているわけです。特に日本人も、イスラム文化というのは程度の低い文化だとか、テロの文化だという事を言います。勉強している方は分かるはずなのに、勉強しないとそういう事になってしまう。

 そうした中で北朝鮮の文化、北朝鮮問題があります。アメリカという国がトランプになったときに、2つに分かれたユダヤの問題があります。これは私が長い間、何度も言ってきていることです。これはナショナル・ユダヤとグローバル・ユダヤの対決なのです。グローバル・ユダヤが北朝鮮を守ってきたし、中国を守ってきたのです。しかし今はナショナル・ユダヤの方に行こうということで、クシュナー(トランプ大統領の娘婿)をはじめ財務長官、商務長官が全部ユダヤ人です。新しいナショナル・ユダヤがイスラエルと組んでやろうとする、そういうことなのです。その一環として北朝鮮問題があると私は分析しています。そういう事をリトアニアの人に言ったら「そうだ」と。彼らも自分たちが世界を見ているということを言っています。実を言うと、リトアニアもユダヤ人なのです。もう一つ今回のヴィリニュス大学での講義は、先程言いかけた「神道」をもっと教えてほしいということでした。神道をもっと教えてほしいということです。仏教は分かる、と。禅もあるし、インドから来たわけですから。ところが神道というのは一体何なのだということです。その割に、日本というのは神道で支えられているということは知っている。仏教といえばインド、中国から来たという事なのです。そこで神道について、私の知見で話したのですが、縄文からあるという、自然信仰だということ。あるいは御霊信仰、それから皇祖霊信仰。そういう信仰にひとつの風土的な体型がある。実を言うと、そういう問題は基本的にヨーロッパでもどこの国にもあって、キリスト教が来る前は神道のようなものだったのではないかと。そういう同じような信仰体系というのがあったのではないか、リトアニアは特にそうです。リトアニアというのは、14世紀頃に最後にキリスト教になった国です。あそこに特別に十字軍が来て、それでキリスト教国になった。それ以前は、神道的な自然信仰が非常に強い。これは、ケルトもそういうところがあります。もともと神道を知ることによって、イスラム教以前の宗教形態を知ることができる。そういうことが、彼らの日本に対する深い関心につながっています。ですから主任の教授も、「私は神道の徒である」ということを平気で言うのです。その方は日本に半年くらい居たことがあって、伊勢神宮に行って、あれは我々の宗教だと言っています。これは象徴的に言えば、2年前に安倍首相がG7を伊勢神宮でやった。メディアは伊勢志摩の方ばかりを宣伝していましたけども、伊勢神宮に首脳7人が御正宮の前で写真を撮っている。そこでは祈らなかったけれども、御正宮に向かってしっかりと挨拶をした。そしてその後、安倍さんを除く6人の首脳が伊勢神宮の感想を書いている。それは秘書が書いたのかもしれませんが、秘書自体が認識しているに違いなくて、それを読みますと、一斉に「すごいところだった」「これほど良いところはない」「こういう会議をするのにふさわしいところだ」。そしてその自然というものについて、特に社会主義のようなオランダがそれを褒めています。伊勢神宮で7人の首脳を集めてやったということ、これはある種の象徴です。だいたいのジャーナリストは、いろんなところのひとつに過ぎないと思っているようですけれども、あそこでやったことは非常に重要です。他の首脳たちも、非常に静かな自然の中でやったと感じていて、あれが軍国主義の象徴だというような事は誰も言いません。そういう世代になってきたということなのです。世の中はどんどん変わっていきます。新しい状況の中で、日本の歴史をもう一度自信を持って見直すという事。これをやらなくてはいけません。リトアニアの教授もそういう意味で私を招いて下さったらしいのです。そういうことでこれからも、いろんな講師の方にお話をいただいて日本の学を深めていきたいと思います。

平成30年5月12日:当会代表理事/東北大学名誉教授 田中英道