代表理事 平成28年11月のごあいさつ

 ちょうど今、アメリカでトランプが大統領になって、本当に意外なというようなことばかり、マスコミが伝えてもいます。今まではグローバリゼーションなどあらゆる戦後の思想を、あたかもそれがエリートの考え方、イデオロギーのように思わされてきました。それがクリントン含めて、化けの皮が剥がれ始めたと言うことができます。

 トランプ自体は教養がなくても、あるいはそれほど知性が感じられなくても、やはり本音というのが出てきて、それがあれだけの支持を受けたということになるわけです。それについてはポピュリズム、要するに白人の中間層以下が支持したとか、いろいろと言われています。けれどもそうではないんです、今までの方があまりにもイデオロギーで人々が物事を考えすぎていたんです。グローバリゼーションも、フェミニズムもそうですね。女性が大統領になるということは、まさにフェミニズムの成果みたいに期待されたところがありました。そういう支持者が多かったけれども、結局サンダースもクリントンも負けたということで、まさにイデオロギーなしの手ぶらの歴史観、考え方というものが今はっきりと必要になってきています。

 ですから実態を直視して、そこから歴史あるいは現実を語るということをしなくてはいけない。ですから私たちはこの日本国史学会を立ち上げて、やはりある意味ではその成果、今までのイデオロギーで見ていた歴史ではない本当の歴史を見つめていく。それゆえに、イデオロギーを抜きとすすれば、歴史の中に何が見えるかという問題が出てきます。そこはやはり、我々の文化と伝統だろうと思います。ですからその文化と伝統をしっかりと見すえることによって、別にトランプが当選したから彼を支持するのではなく、彼の言う、ある意味での壁をぶち破って、これまでのエスタブリッシュメント、そして民主党の偽善性ですね。一方では進歩的なことを言いながら、クリントンの財団が2,000億集めて完全に私腹を肥やしているというような話だったわけですが。いずれにしても、そういう金融と結びついたエスタブリッシュメントなんていうのはやはりおかしいのです。そのおかしさを今、全部はぎ取ったということであって、これから果たしてアメリカがどうなるか。そこでやはり、日本が日本として主張するためには、やはり我々が歴史と文化を再検討するという以外にないわけです。

平成28年11月  当会代表理事/東北大学名誉教授 田中英道